第5章 スカーフ
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時間は流れ、放課後となった。
結局、あの後遥は白石にべったりでまともに話をする事が出来なかった。と言うよりも、遥と話をしていない。彼女と話す白石は、とても幸せそうな雰囲気と表情を醸し出していて、とてもじゃないが間に割って入る事が出来なかったのだ。
ーー今回も遥の魅力に墜ちる、のかなぁ。
そんな事を思いながらぼーっと自席で時間を潰す。黒板に書いてある今日の日付けを見て「そう言えばそろそろ遥の誕生日だなぁ」なんて思い出す。
今年は何をプレゼントしようか。「あ、この前スカーフプレゼントするって言ったな」と思い出す。出会った時には既にスカーフを巻いていた遥。さぞ沢山スカーフがあるのだろうと思っていたが、一度家にお邪魔させてもらった時に見たクローゼットの中には三枚ほどしかなかった。
洗い替えと、何かあった時用にしか持っていないらしい。
『沢山持ってても、首はひとつしかないんだし』
なんて言いながらスカーフを見つめる彼女の声音は、何故だか僅かに苛立っていたように感じた。
ーーあの時、なんで遥は怒ってたんだろう。…まぁ、気分屋だし…特に深い意味はないか…。
そんな事を考えながら、ちらりと時計を見る。放課後になってから三十分が経った。LHR終了後「今日の日直~、ちょっと頼みたい事あんねん。放課後ちょっとええか~?」と言う担任の言葉にあからさまに嫌そうな表情を浮かべた本日の日直である遥。
眉間に皺を作り唇を尖らせ子供のように不機嫌な顔をする彼女に、昔から変わってないなぁ…なんて軽く笑いをこぼす名前の目に、不意に映った白石。
頬杖をついた彼は目を細め、頬を緩ませていた。
ーーあぁ、遥に恋してるんだろうなぁ。
そう理解した途端、笑いが引っ込んでしまい気分はズンと重くなった。その時の事をうっかり思い出し、名前は慌てて首を左右に振る。
彼は遥に恋をしているかもしれないが、名前は彼に恋をしているのだ。どうにかして振り向いてもらえるような、何かいい案はないものか…と唇を尖らせる。