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《R18》知らないんでしょ《庭球》

第5章 スカーフ



 ーー私は、恋がしたいよ、遥。私は、他の人も必要だよ。

 そう言ったところで、遥は癇癪を起こし話を聞かなくなるだろう。目に見えてわかる。

 ーーそれでも、一回きちんと言ってみようかな。

 あぁだろう、こうだろう、と考え、勝手に決めつけるのは良くないーーと、生意気な後輩である財前光と話して名前はよく理解した。
 きっと私はこう思われているのだろう、とか勝手に決めつけ一人で恥ずかしくなっていた名前に、財前は当たり前のような顔をして言葉を紡ぎそれを渡してきた。
 彼にとっての当たり前は、名前にとってはとても新鮮で、腑に落ちるものだった。そんな彼に渡された言葉に影響を受け、名前は少しずつ変わろうとしていた。

「ねぇ、遥ーー」

 勇気を出して、そっと口を開いた。
 少しずつ、少しずつ。

 ーー私だって、白石くんとーー…。

 ふっ、と人の気配がしたのと同時に影が差した。反射的にそちらへと視線をやると、少し困ったような笑みを浮かべた白石がそこに居た。

「暑そうやなぁ、遥。苗字さん、遥仰ぐの変わろか?」

 とん、と机に片手をつき小首を傾げ聞いてくる白石の表情はとても柔らかく、自然と名前の心臓が跳ね上がった。しかし、その笑顔の理由と、言葉の意図に気づかないほど名前は幼稚ではない。

「ううん、大丈夫だよ。腕のいい運動にもなるし」
 そう言って笑みを返すと、白石は一瞬残念そうな表情を浮かべたものの、直ぐに先程と同じ笑みを浮かべた。

「そか。せやったら疲れたら言うてな?いつでも代わるし」
「うん、ありがとう。優しいね、白石くん」
「そんな事ないって、普通やで」
「はいは~い、遥ちゃん復活。蔵ノ介、話があるからちょっとこっち来て」

 突然上体を起こしたかと思えば白石の腕を掴み、席を立ち上がった遥に名前と白石は驚いた。

「…ん、分かったわ」

 しかし、驚きなんてものは直ぐに無くなったらしい彼は、ほんのり頬を赤く染め素直に頷いた。

 そのまま二人は、名前を残して教室を出ていってしまった。

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