第4章 揺れていたもの、落ちたもの
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財前お気に入りのカフェへとやってきた。
落ち着いた雰囲気の店内は、置かれている家具や、流れているBGM、更には店主であろう中年男性までもがお洒落で思わず感嘆の声が漏れてしまう。
「キョロキョロし過ぎっすわ」
「あ、ご、ごめん。あんまりこういう所来ないから…。落ち着いてて、お洒落でいい所だね」
「そっすね。ここの雰囲気が気に入って、ここよく来てるんで」
「え、一人で来るの?」
「そうですけど…なんか問題あります?」じろりと睨む財前に、名前は「いや…」と首を横に振る。
「一人でこういう所来るの凄いなって思って。良いなって思っても、なかなか入れなかったりするから、私」
「なんで入れへんのですか」
「うーん…なんでだろう?自分には敷居が高すぎる感じがするのかな?後は、一人だと心細くて勇気が出ないからかな?だから、財前くんみたいに一人でこういう所来れるの、すごくかっこいいなって思うよ」
「……別に、普通やと思いますけど」
頬杖をつきながらそう言った財前は、ほんの少し手をずらし口元を隠した。指の隙間から見える頬はほんのり赤く、名前はどうしたのだろうか?と首を傾げたが聞きはしなかった。
テーブルの端に置かれた小さなメニュー表を取り眺める。
「俺、白玉ぜんざいで」
「…はいはい、奢りますよ」
「ごちっす」
にっ、と笑いながら言ってくる財前に、名前は嘆息を吐きつつメニューを眺める。今しがた彼が強請ったように和風の甘味もあれば、パフェやケーキなどの洋風のものもある。
お腹が空いていれば嬉々としてどれにしようかと悩むものだが、生憎腹は減っていない。ふぅ、も息を吐いてから飲み物のみ注文する事にした。
グラスを磨いている店主に声をかけると、ゆったりとした動作でこちらへとやってきた。財前と自分の物を注文すると、店主は直ぐにその場を離れた。
「なんなんすか、あの人」
店主が居なくなったと同時に、うんざりとした様子で財前はそう口にした。あの人、とは?と一瞬眉を潜めた名前であったが、直ぐに遥の事だと分かった。
ーーなんなんすか、と言われてもなぁ…。
親友、だと思っているが…名前自身、遥が何を考えているのか分からないことが多すぎる。