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《R18》知らないんでしょ《庭球》

第4章 揺れていたもの、落ちたもの



 その声に、名前の心臓はドキリと跳ね上がった。
 反射的に声のした方へと視線を向けると、頭に浮かんだ人物ーー白石蔵ノ介がそこに居た。無表情の財前を睨みつける遥、その睨みを受けても尚無表情の財前。そして顔を引き攣らせた名前。傍から見たらカオスな状況だろう。
 白石の表情が、このカオスな状況に困惑している、と言っている。

「白石くん、どうしーー」
「ちょっと蔵ノ介!なんなのあの子!失礼すぎる!」
「ちょ、どないしたん遥。一回落ち着き」
「落ち着けるわけないでしょ!?この私が話しかけてるのに、あの態度、なんなのよ!」

 眉を吊り上げ、甲高い怒声を口から溢れさせる遥に白石は更に困惑する。しかし、困惑の表情に、僅かに見え隠れする嬉しそうな表情。彼女が白石に詰め寄り、距離が近いからだろう。

 ーー……帰ろうかな。

 ふっ、と視線を外しながらそんな事を思った。机に置いておいた鞄を眺めながらどのタイミングで帰ろうか、と考えあぐねていると不意にカタン、と音がした。
 反射的にそちらへと視線をやると、テニスバッグを肩にかけた財前が興味なさげに白石と遥へと視線を向けた。

「すんません、用事あるんで帰りますわ」

 そう言った財前に、白石と遥は目を見開いた。まさかこのタイミングで帰るとは…と名前は感心した。
 驚きの表情を浮かべる白石と遥の横を通り過ぎたかと思えば「あ」と小さく声をあげた財前に全員の視線が注がれる。

「そう言えば、用事あるんちゃうんですか、名前先輩も」
「えっ」突然名前を呼ばれマヌケにも声をひっくり返して驚いてしまう。
「は?ちょっと、なんでアンタ名前の事呼び捨てなのよ。何?いい感じなの?アンタ達」
「い、いや…知らな…」
「早く帰りましょ、名前先輩。お邪魔みたいなんで、俺ら」
「わっ…」

 数歩歩いてこちらにやってきたかと思えば、腕を掴まれた。
 突然の事に頭がついていかず、しぱしぱと目を瞬かせながら掴まれている腕を眺めていると、財前の足が進み始めた。

 ーーん?ん??んんんん???

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