第4章 揺れていたもの、落ちたもの
「いやー蔵ノ介と何処で食べようか話しながら歩いてたら窓から名前が見えてさ~!しかもしかも男と一緒に食べてるじゃん?気になって来てみたの」
名前の笑みを浮かべながらの問いに遥も同じように笑みを浮かべながらそう答えた。隣の白石は少し何か言いたげだが我慢しているーーように見える。
しかし自分に視線が注がれている事に気がついた彼はすぐ様いつもの王子様スマイルを浮かべ口を開いた。
「苗字さん、財前と仲良かったんやな」
「え?いや別に……」
「別に普通やと思いますけど。……仲良いのは、そっちちゃいます?」
つい、つい、と指差す先は白石と遥だ。
「ふはっ、仲良さそうに見えるんや?」指をさされ、投げられた言葉に至極嬉しそうな笑みを零した白石。
「えー別に普通じゃない?」対して遥は小首を傾げ微妙な表情を浮かべている。
「ねぇ、それより!折角だから四人で一緒に食べようよ!ねっ、そっちのが絶対良いって~!」
「え、でも……」
遥の言葉にちらりと視線を白石へと投げれば、彼は眉を八の字に垂らし困ったような表情を浮かべている。
ーーあぁ、やっぱり二人が良いんだね。
ちくちくと、針で刺されるような痛みが心臓を襲う。
嫌だな。この場から立ち去りたいな。名前はぼんやりとそう思った。
しかしそんな事を言えるわけもない弱虫で汚い名前は、了承の言葉を紡ぐためそっと口を開いたーーが、その口をそっと塞がれた。
誰に?財前光と言う男に、だ。
「すんませんけど、苗字先輩に聞いてもらいたい話あるんで、勘弁してもろてええですか」
口を塞がれたまま目を丸くし固まっている名前を他所に、財前はつらつらと言葉を紡ぐと早く何処かへ行けと言わんばかりのオーラを目の前の二人に放った。
余程の馬鹿でもない限り、その言葉とオーラで自分達は歓迎されていないのだと言う事が分かるだろう。その証拠に、ぴくりと小さく眉を跳ねあげさせた遥はニコリと笑みを浮かべ「そっか」と言葉を吐いた。