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《R18》知らないんでしょ《庭球》

第4章 揺れていたもの、落ちたもの



 悩んだ末名前が向かった先は中庭であった。人がぱらぱらと居るが、いずれも一人の者が多く静かな為居心地の悪さは感じなかった。
 出そうになる溜め息をゆっくりと深呼吸をして逃がしてから近くのベンチへと腰掛けた。

 ーー今頃二人で楽しそうに話しながらお弁当食べてるんだろうな。

 出来る事なら自分もその空間に居たかった。しかしそんな事をして惨めな思いをするのは自分なのだと、痛いくらいにわかる。
 美男美女に挟まれて、平々凡々…いや、もしかしたらそれよりも少し下かもしれないーーまぁ、なんにせよ遥と白石の二人と一緒に昼食を共になんてしたら、周りからどう見られるか目に見えている。
 場違いだの、浮いてるだの、それらの言葉を言われるだろう。
 何故こうも自分を卑下するのか。小さい頃から想い人を幾度となく略奪されてきた名前は、その都度彼らに言われたからである。

『遥ちゃんの方が可愛い』

 それは名前が想い人に幾度となく言われた言葉。頼んでもないのに、遥が「名前があなたの事好きみたい」と伝えてその後に言われるのだーーいつも、いつも。
 骨抜きにしたのであれば、こちらの様子など伺わずそのままで居ればいいのに。遥は全くもって要らない事をしてくれる。気遣いとか、そんなのではない。名前の反応見たさの遊び感覚かなにかだろう。

 ーー本当、よく友達やってるよねぇ。

 腹の底からわいてくる黒いものを、溜め息として吐き出す。しかしそれは決して消えることなく腹の中に居座っている。
 ベンチに腰掛けた名前は弁当を膝に置き、そっとそれを開いた。

「あ、そうだ」

 自身が作った弁当。箸を掴み食べる寸前でふとある事を思い出す。ポケットに手を突っ込み、ある物を取り出す。手のひらより少し大きめな音楽プレイヤーだ。
 イヤホンを耳にはめ、そっと再生ボタンを押す。
 音量は大きめで。何も考えずただ歌に没頭したいから。

「……ん?」

 いつもなら直接脳に響くような、ビリビリとした音が耳に入り込んでくるのに。何故か今日は音が小さい。

 ーーイヤホン‪壊れたのかな?

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