第4章 揺れていたもの、落ちたもの
ーーそのうち痛い目に合えば良いのに。
荒んだ心の名前はそう思う。いつもいつも。いつもいつもいつもいつもいつもーー遥は名前の恋の邪魔をする。いや、恋だと確信する前の淡い想いの時点で邪魔をする。
腹立たしい。鬱陶しい。見たくない。一緒に居たくない。顔も見たくない。
そう強く思う反面、親友に向かってなんて最低な事を思っているんだろうとも思う。女とは所詮男が絡むとこんなものなのだろうか?自分で自分に問いかけて、嘆息が漏れた。
下がっていた視線を、つい、と上げる。視線を上げた先には白石蔵ノ介と楠遥がそこにいる。楽しそうに、笑っている。
ーー遥と高校離れたりしたら、恋愛が出来たりするのかな。
頬杖をつきながらふとそんな事を思った。小さい頃から一緒で、幼馴染みの名前と遥。もし、近い未来遥と別の高校を受けるとしたら、彼女はなんと言うのだろうか?
名前に執着心のようなものを持つ遥。嫌だと言って自身の志望校を蹴ってまで名前と同じ高校に行くと言うかもしれない。
そうしたら、また、これまで通り…異性に淡い想いを抱いた名前を嘲笑うかのように略奪していくのだろうか?考えただけでも気が滅入る。
もう一度、嘆息をつこうとしてチャイムが鳴った。吐き出そうとしたものが奥に引っ込んでしまい気持ち悪かったが無視をして担任が来るのを待った。
騒がしかった教室内であったが、クラスメイト達が着席するにつれ次第にその騒がしさもなくなっていく。それなのに嫌でも耳に滑り込んでくるクスクスとした笑い声。
遥のものであった。そちらへと視線を流せば席についた彼女がシャーペンを握りノートに何かを書いている。程なくてそれをピリピリと投げ四つ折りにしてからそれを投げた。誰に?白石蔵ノ介に、だ。
それを受け取った白石は少し驚いた様子を見せたがすぐにそれを開き、目を通すと遥同様クスクスと笑い始めた。少し離れた席で、二人目を合わせてクスクスと笑い合う。
ーーあぁ、もう、本当にー…
口を開いいて出かかった言葉。それだけは言ってはダメだと、名前は慌てて口を噤み逃げるように机へと突っ伏した。