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《R18》知らないんでしょ《庭球》

第3章 四天宝寺の王子様



「四天宝寺一のイケメン、なんだよね?しらいしくらのすけって」
 たらりと額に冷や汗を流す名前の表情を、三日月の形をした目と口のまま遥は楽しげに言葉を紡ぐ。
 白くてキメの細かい、綺麗な手を合わせて小首を傾げて聞いてくる彼女に嫌な予感がじわじわと顔を出す。

「う、うん…そうらしいね」
「そのしらいしくらのすけってさ、さっきアンタが抱き合ってた奴のことでしょ?」
「……だ、抱き合ってはないけど…うん、あの人が白石くんだね」

 嫌な笑みを浮かべながら何かを探るようにして言葉を紡ぎ渡してくる遥に、名前はひくりと頬をびくつかせる。女特有の、回りくどい…面倒くさいやり取りだ。

「ふーん。やっぱりね。アンタ、嬉しそうだったもんね」
「えっ?」

 やけに落ち着いた声が紡いだ言葉に、名前は目を見開き間抜けな声を出した。見開いたその目で、遥を見つめればーーにたり、と。
 綺麗に、そしてどこか不気味に笑みを浮かべた。



 ー ー

 クラス表を見た二人は頭上に降り注ぐチャイムを耳にした途端、顔を青くさせその場を後にした。向かった先は勿論3ー2。二人が一年間世話になる教室だ。
 あまり激しく動く事が出来ない遥の手を取り小走りで3ー2の教室へと滑り込めば、今日から担任となる教師が「ギリギリセーフにしといたるわ」と笑ってみせた。
 その事にほっと安堵しつつ、遥へと視線を投げる。

「喉、平気?苦しくない?」
「少、し…苦しいけど…このくらいなら、平気」
「そっか。無理そうなら我慢しないでね。背中擦るくらいしか出来ないけど」
「ありがとう。…ふふ、薬とかよりも名前に背中さすられる方が一番効くから助かるよ」

 そう言って目を細め笑う遥に、不覚にもキュンとしてしまう。可愛いなぁ、なんて。同性でも思ってしまうのだからこれが異性ならばイチコロだろう。

 ーー私が男だったら、好きになっちゃうんだろうなぁ。

 そんな事を思いながら同じように笑い返せば「大好き」なんて言っくるものだから、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてしまう。ふとした時に言うこういう言葉も、やはり名前をキュンとさせる。

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