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テニ夢企画用

第1章 【見えない角度で手を握り締め】財前光


先輩達は財前くんに用事もあると言って一緒に4人でクラスに戻ると、クラスメイトの女の子達が黄色い悲鳴をあげる。
あぁ、そうやった。先輩達は人気がとてもあったんやと思い出しながら席に着こうとすると、私を睨んどる様にも見える財前くんと目が合う。
目があっとったのは一瞬の出来事やったはずなのに、永遠の時間にも感じた。

彼が怒っとるというのが直ぐに分かった。
普段感情を表に出すことをあまりせぇへん財前くん…そんな彼が苛立っとるのが私ですら直ぐに分かる程の表情やった。
その怒りが私に向けられとると分かると自然と目尻に涙が溜まっていくのが分かった。

私は目尻から涙が零れ落ちへんように直ぐ様彼から視線を外して自席に座る。
次の教科書を机の中から探すふりをして目尻に溜まった涙を気付かれへんようにソッと拭う。

この時の私は自分の事に必死で、私の席を横切っていく財前くんの表情を見ることも出来ひんかった。
私を心配して暫く私の席の横に立ってくれとった【友人名前】ちゃんが財前くんを睨んでいたことも。
そして財前くんを呼び出した先輩達が彼に何を話したのかも何もかも気にする余裕がなかった。
こうして今日のお昼休みが終わりを告げたのやった。

***

不運とは重なるもんで…今日が委員会の集まりがあることをすっかり頭から抜けとった私はHRが終わった後で私の席の横に財前くんが立っていて驚いてしもうた。
帰る気でいた私は丁寧に鞄に教科書を詰めとったからだ。

「…今日委員会やけど」
「え!?」

財前くんのその一言ですっかり頭から抜けとったことに気付かされて慌ててノートと筆記用具を鞄から取り出す。
忘れっぽい私はスケジュール帳に色々とメモをしとったと思い出して鞄からそれも出して今日の日付を確認する。
確かに委員会の集まりと書いてあった。

ここ数日、財前くんの事ばかり考えていて他のことを全く気にしていなかったのだと自身に呆れた。
筆記用具類以外に持ち物は必要ないことを確認すると私は彼に謝罪をして委員会の集まりがある教室へと歩き出した。
いつもは財前くんと他愛もない話をしながら向かうのだけれど今の私達の間には重苦しい空気だけが漂っていてとても気まずいなと思いながら足取り重く私は教室へと向かったのやった。
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