第1章 【見えない角度で手を握り締め】財前光
「あの…大丈夫です…すみません」
暫く泣くと落ち着いたのか私の涙がやっと引っ込んでくれて先輩にお礼を言う。
顔を上げた時に飛び込んできた白石先輩の笑顔に驚いてしまって一瞬息を呑んだ。
先輩の綺麗な顔での笑顔が至近距離なのは心臓に悪いなと思った。
ただ驚きはしたけれど、私の胸はドキドキと高鳴ることはなかった。
あぁ、私はやっぱり財前くんのことが好きで、心乱されるのは彼だけなのだと悟る。
こないな不安定なままで彼とお別れしてしまうような事だけは嫌だなと思った。
「【夢主名前】…ごめん。考えなしやったわ」
私がそんな事を考えとると、しらん間に落ち着きを取り戻しとった【友人名前】ちゃんに謝罪された。
彼女の方を見ると隣に忍足先輩がいたので、先輩が【友人名前】ちゃんに何か言ってくれたのかもしれへん。
忍足先輩にも感謝しきれへん程にありがたく思った。
「あのほんまにお2人のお昼休みの邪魔してしもうて申し訳ないです」
「あぁ、大丈夫やから。まだ時間あるし、そこで育ててる毒草の世話しに来ただけやし」
「せやで?あんま気にせんでええわ。俺のスピードなら直ぐ終わるわ!」
「いや、謙也?雑に扱うのは止めてくれな?」
先輩たちが私に気ぃ遣ってくれてとるのが伝わってくる。
確かにお昼休みの時間はまだ残っとるけれど、草花の世話となると下手すると時間がかかるはずだ。
それなのに私が気にしぃひんように言ってくれているのだと直ぐに分かる。
「あ、あの。その…私、知識とかないですけど手伝えることありませんか!?」
だからこそ私は先輩達に提案をした。
自分のできることなんて微々たる事やと思う。
それでも私に親切にしてくれた先輩達にお礼がしたいと思った。
2人より3人の方がはよ出来ると思ったからや。
私の申し出を有り難く受け取ってくれた先輩たちと、また【友人名前】ちゃんも手伝いに参加して私達4人で急いで残りの時間で草花のお世話をする。
時間内に手際よくスピーディーに…と頭をフル回転させて手伝っとるうちに先程までの悲しい気持ちにも向き合わなくて済んで私は良かったななんて思ってしもうた。
4人での作業はほんまにあっという間に終わり、私達は荷物を片付けて昼休みの時間内に教室に戻る。