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テニ夢企画用

第3章 【優しく積もる淡い恋】千石清純


「大丈夫だよ。千石くん、テニス部忙しいでしょ?」
「いやいや。でもさ、女の子が1人で作業してるの見過ごせないよ」
「ありがとう。でもね、私今日、人と約束してて…。待ち合わせ時間までまだあるし、だから大丈夫なんだ」

そう言って静かに言葉を放った彼女の表情は穏やかで笑っている表情なのに俺にとってはそれは拒絶に見えた。
俺との境界線を綺麗に引かれたのを実感して俺は彼女の言葉を受け入れる。

「そっか…、なんかごめんね」
「ううん。千石くんが申し出てくれたの嬉しかったよ、ありがとう」

そう言ってふわりと微笑んでお礼をいう彼女から目が離せなかった。
線引をされたはずなのに、それでも彼女のことを俺は目が離せなかった。
今まで俺のことを苦手だと思う女の子だっていた。
彼女も今までの子たちと同じ様にそう思ったんだろうなと思ったからこそいつものように俺は近付かない様に俺自身も線引をするはずだった。
でも何故かあの時の申し訳無さそうな表情をしてから、微笑んでお礼をいう彼女のことが俺は忘れられなかったのだ。
何故なのかあの頃の俺は不思議な気持ちでいっぱいだったけど今ならわかる。
あの顔に恋に落とされたからだ。

それからの俺は彼女のことを不自然にならないように目で追う日々を過ごす羽目になる。
人に気付かれないようにとか割と柄じゃないんだよねと思いつつも彼女の迷惑になるのは嫌だなと思ったからだ。
まぁ、でも…付き合い長い奴や勘の鋭い人相手だとそれらも誤魔化しも効かないんだよなぁ…と脳裏に過る人物たちを思い浮かべ苦笑するしかなかったのだった――。
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