第3章 【優しく積もる淡い恋】千石清純
「…あれ?【夢主名字】さん1人?」
「え?…あぁ、千石くんか。うん」
たまたま忘れ物を取りに放課後の教室に戻るとか今日の俺ついてないよなぁなんて思いながら教室へと戻ると教室にぽつんと残っている人を見つけた。
後ろ姿でも何となく誰だかは察せられる。
それに今日の日直の1人は彼女だったはずだ。
だから彼女の名を呼ぶと彼女は話しかけられると思っていなかったようで俯いて作業をしていた顔をあげてこちらを見た。
「どうかしたの?」
「いやぁ、教科書忘れちゃったんだよね。今日宿題出てたでしょ?」
俺がそう正直に告げると納得したようで『そうなんだ。災難だったね』と告げて彼女は苦笑する。
そして俺との会話が途切れると彼女は先程までやっていた作業を再開させた。
黙々と手元にある何かのプリント類を一つずつ取りホッチキスで止める作業をしていた。
彼女の目の前にあるプリント類は出来上がった物を見れば減ってきているのは一目瞭然だったが、それでもまだたくさん残っているのを見て俺は声をかける。
「あのさ、これもしかして日直の仕事だったりする?」
「…まぁ……ね」
俺が教科書を取り出したのに帰らずに質問をしたことに驚いた様で彼女は少しだけ驚いた表情を見せてから苦笑する。
日直だということは男の方の当番がいたはずなのに彼女が1人で仕事をしているのは何故だろうと思いながらも俺は流石に見てしまったものを、そうなんだで終わらすことは出来ないと思い彼女に「手伝うよ」と提案すれば驚いた表情をしてから彼女は首を左右にふる。