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テニ夢企画用

第3章 【優しく積もる淡い恋】千石清純


あの夏の日の出来事から少しして、私と千石くんが実は同じ大学の別の学部に通っていた事が判明して距離が少し近くなった。
中学の時からでは考えられないぐらいだ。

山吹中に通っていた頃は可愛い女の子とみると声をかける彼をみて軽薄だと感じていて少し苦手だった。
周りの女の子たちがそれでも、かっこいいと騒ぐ度に私は理解が出来なかったし、当時の私が好きだった彼の方が誠実で何倍も素敵だと思っていた。
でもそんな事はなかったと知らしめられたのは、その中学の時からほんの数年後…千石くんと再会した雨の日だったのはなんの因果かと思ったけれども。

山吹中にいた当時にお付き合いしていた年上の彼を追いかけて大学へ入学した私は浮かれていた。運の良いことにその大学に志望する学部があったのも運命だと感じていたので余計に浮かれていたのだ。

そんな浮かれた数か月を過ごしていた私は彼の変化に何も気づかないままだった。
あの夏の日に、午後は雨が降るという天気予報も無視して浮かれた私は彼の住んでいる最寄り駅まで傘も持たずにやってきていた。
その日に約束なんてしていなかったけれど2人の記念日だからドッキリ作戦だ!なんて浮かれてた私に冷や水を浴びせるかのように雨が降り始める。
ついてないな…なんて思って彼の家の近くまで来れば楽しそうに会話をして手を繋ぎながら相合い傘をさして歩くカップルの顔に見覚えがあった。
見覚えがあるだなんて言えるレベルではなかった。
だって彼の部屋にその二人は入っていったのだから。

私は何かの間違いかと急いで彼に電話をかける。
つながるまでのコール音が長いと感じながらバクバクと心臓が煩い。
そして暫くすると繋がらずに留守番電話へと接続される。
私はメールで『忙しい?』と連絡するとすぐさま返事が返ってくる。
『悪い、今日は課題あるから』と。
その素っ気ない返事から全てを悟り、私はゆっくりと彼の家から踵を返す。
ゆっくりだった足取りは足早に…そして人通りが多くなってきたあたりで私は疲れて、あの日はあのまま雨に濡れて駅の反対側を彷徨い歩いていた所を千石くんに拾われたのだった。
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