第2章 【人気者の君に妬く】丸井ブン太
恐る恐るブン太を見れば、茶化すでもなく笑うでもなく驚いた表情で私を見ていた。
てっきり冗談扱いされるかと思っていたのに真剣な話として受け取られてしまったのだと察した私はブン太に懇願した。
「ごめん、今の言葉聞かなかったことにして…」
聞かなかったふりをして欲しかった。
こんな大事な時期に秘めた想いを告げる気なんてさらさらなかった。
あの面倒な事に巻き込まれなければ、もしかしたら一生告げなかったかもしれない。
そんな私の秘めた想いをこんな風にポロッと告げてしまう事なんてしたくなかった。
でも私のお願いはあっさりと却下されてしまった。
「ヤダ」
「なんで」
「嬉しいからに決まってんだろぃ?分かれよ。てか俺の方がお前が俺を好きだった時間よりぜってぇ好きな時間なげぇからな」
ブン太の言葉に驚かされて私は何も言えなくなってしまった。
今、ブン太は何と言ったのだろうか?
『俺の方がお前が俺を好きだった時間よりぜってぇ好きな時間なげぇ』とは何だろうか?
私の都合のいい聞き間違いでは無いかと動揺してしまう。
「……冗談――」
「んなわけ無いだろぃ!」
あまりに都合のいい言葉に驚いてしまって冗談かと思って聞き返そうとすればブン太から思いっきり言葉の途中で否定されてしまった。
ブン太の言葉はつまり私と同じ気持ちと思っても良いということなのだろうか?
ブン太の台詞に私の心臓がドキドキと煩い。
どうにかなってしまいそうだ。
「ご、ごめん。何かその……夢かと思って」
「夢かどうか試してみるか?」
私が精一杯絞り出せた言葉に対してブン太は余裕そうだった。
余裕のない私を見てブン太はニヤリと笑う。
その微笑みは悪戯っ子の様だった。
だから私は咄嗟にブン太の行動が読めずに何かされると思って名前を呼ぼうと口を開く。