第1章 【見えない角度で手を握り締め】財前光
流石に考えてた内容が内容やったから話さんと先程の件を話したのだけど、いつもならサラッと流して話を聞いとる財前くんにそこを追求されるとは思ってへんかった私は不意を付かれて黙ってしまう。
正直に貴方の事を考えてましたと言えばええのだけれど、ちょっと気恥ずかしいのと内容が内容で「貴方のことで勝手に不安になってました」なんて言えるわけもなく、どう話そうかと悩んでしまった。
「…別に言いたくなければええけど」
私がどう話そうかと考え込んでしまって何も言えんとおると、財前くんはそう素っ気なく言う。
彼の纏う雰囲気が一緒に帰る前に戻ってしまい私は動揺する。
怒らせてしもうたと思った時にはもう遅く、謝ろうとした瞬間に私と彼の家路の分かれ道の場所で『じゃ』と素っ気なく財前くんは言って私に背を向けて歩き出しとった。
彼の背中を見えなくなるまで見つめとった私の頬に涙が流れるまでの時間はそうかからへんかった。
***
「喧嘩したん?」
「どちらかと言うと呆れられたというか…」
あの日から数日。
私と財前くんの関係はギクシャクしとった。
昼休みに友達の【友人名前】ちゃんと2人で人気がないと以前に財前くんに教えてもろた屋上に来とった。
私の気持ちとは裏腹に天気は快晴で心地よい風が吹いとる。
絶好の外でのお弁当日和だ。
外で【友人名前】ちゃんとお弁当を広げて食べ始めるがあまり食欲は湧かへんかった。