第2章 【人気者の君に妬く】丸井ブン太
「クラスメイトは…まぁ、幸村くんが対応してるから直接は言われないけど好奇心的な視線がねぇ…疲れるんだよね」
私がため息を付きながらそう話すと仁王くんはクラスの状況を察したのか、ポンっと私の頭に手を置いて何回か優しく叩く。
励ましてくれているのだろう。
その行為が今の私の心に優しく染み渡った。
「たまには良いんじゃないかの?ここならほぼ人来ないしの」
「ありがとう。じゃあお言葉に甘えて」
仁王くんの言葉なので本当にここはあまり人が来ない場所なのだと確信した私はこの場にゴロンと寝転んだ。
寝転んでみてわかったが意外と屋上の床は冷たいんだなとわかり、新しい発見だなと思った。
「【夢主名前】はたまに無防備じゃの」
寝転んだ私を見て仁王くんが苦笑する。
そんな風に言われてしまい、そうかな?と思ってみたがそう言えば前にブン太にも言われたなと思い出す。
「そう言えば前にブン太にも言われたかも」
私がそう答えると仁王くんが笑う。
そして何処からともなくタオルケットを取り出して、寝転んでいた私にそれを優しくかけてくれる。
「うわ!?何処から出したの!?」
「企業機密」
そう答えて仁王くんは自身の指を唇に当てた。
その姿、様になってるなーなんて思い私は眺めていた。
仁王くんもそう言えば人気あるもんな…なんて彼宛の差し入れの数を思い出していた。
そしてこのマジックの様な行動は物凄く興味があったが、こう答えるということは本当に秘密なのだろう。
教えてもらえない事は少し残念だけれど、彼の優しい行動に私は素直にお礼を述べた。
「ありがとう」
私がお礼を言うと仁王くんは笑いながら屋上を後にする。
その後姿を寝転びながら見送った私は、ふとある事を思った。
「……もしかして仁王くんじゃなくて仁王くんの格好をした柳生くんだったとか?」
あまりに仁王くんが私に親切にしてくれたから、もしかして何らかの事情で入れ替わっていた柳生くんだったのではないかと疑ってしまう。
でも、仁王くんも別に意地悪なわけではないしな…とも思うので、結局私は今私に優しく接してくれた仁王くんに心の中でもう1度お礼を言って目を閉じた。
もう初夏だけれど、日陰で寝転んでいるので、屋上に吹く風は心地よく私の前髪を揺らしたのだった。
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