第2章 【人気者の君に妬く】丸井ブン太
それに彼女の気持ちは痛い程わかる。
私も何度も囁かれるブン太と他の女の子達の噂話にはこれまで味わってきた。
きっとこの子も私と同じで噂話に振り回されてしまったのだろう。
それにしても何故急にそんな噂が流れているのかの方が理解出来なかった。
「それにしても噂の出処とか分かる?」
私がそう聞くとその子は首を左右に振る。
誰に聞いたかは教えてもらえたが、その子が誰から聞いたかまでは慌ててしまって聞きそびれてしまっていた様だ。
私はもし聞けるようならとお願いするとその子は快く引き受けてくれる。
私は安堵して自分のクラスへと向かった。
立海テニス部の部長とマネージャーが付き合ってるなんて噂話は正直これから大会もあるというのに勘弁して欲しかった。
関東大会では苦汁を舐めさせられた私達は一丸となってこれから全国大会に挑まなければいけないのに。
こんな噂話なんかは真田くんは一喝してくれるだろうけど、それでも部内が変な空気になる事は避けたかった。
別に本当に付き合っているならまだしも…私達は互いにクラスメイトで同じ部活に所属する学友という気持ちしか持ち合わせてないのだから。
なんて思ったけど私はただ単に自分の想い人に勘違いされる事だけが嫌なだけだった。
ブン太の所にまで変な噂が回ってないと良いけど…と私はため息を付きながら教室の扉を開けた。
ガラッと音を立てて教室の扉が開かれクラスに入ると、私は一斉にクラスメイトからの視線を浴びた。
先程登校してきて1番に私に話しかけてくれた子がキッパリとした子だっただけだったのだと思い知った。
何処からか出た嘘の噂が独り歩きしているのだとクラスメイトからの興味本位の視線で分かる。
ため息を尽きながら自分の席へと座ろうとした時に勢いよく教室の扉が開いて駆け込んできた人物がいた。
物凄い音を立てて教室の扉が開くから誰もが驚いてそちらへと視線を向ける。
いつもは綺麗に整えられた綺麗なストレートヘアーを乱しながら、そんな事もお構いなしに苛立った形相の人物は私へとヅカヅカと近付いて来る。
「【夢主名前】!」
彼女は私の名前を呼びながら私の席へと近付いてくる。
あの形相に誰もが驚いて口を挟めないでいた。
私もそのうちの1人ではあったけれど。