第2章 【人気者の君に妬く】丸井ブン太
そんな事を考えていると私に対して幸村くんは私とっての驚きの言葉を放った。
「本当は俺なんかより丸井の方が適任だったんだろうけど」
「え」
幸村くんの言葉に私は固まってしまう。
隣にいる彼を見れば私を見て苦笑していた。
その表情は既に私のブン太への恋心を見透かしていると気付いてしまった。
「…気付いてたの?」
私が観念してそう言うと幸村くんは静かに微笑んだ。
その表情を見て、私は幸村くんが私のブン太への気持ちを察してしまっている事を確信した。
「結構頑張って隠してたつもりだったんだけどな」
私が苦笑してそう言うと幸村くんは「俺が気付いたのはたまたま」だよと言ってくれる。
幸村くんのその優しさに私は感謝した。
でも幸村くんが察してしまっているのだから、多分柳くん辺り何かは気付いていそうだなと思う。
それに仁王くん辺りも…気付いてそうだなぁと私は内心苦笑した。
全国大会に向けて頑張らなくちゃいけない時に部員に気遣わせてしまうなんてマネージャー失格だなと思った。
「ごめん、こんな時期に」
「【夢主名前】は今まで一度たりとも公私混同してないだろ?」
「そうかもしれないけど。でもマネージャー失格だよ」
私がそう言うと先程まで微笑んでいた幸村くんの表情から笑みが消えた。
いつもの真剣にテニスをしている時の表情に近い彼の今の表情に驚くと同時に私は何を言われるのだろうと身構えた。
「【夢主名前】…。恋って何だろうね?」
「え?」
身構えた私は最初に幸村くんの口から出た言葉に驚いてしまって何も返事が出来なかった。
「俺はさ、まぁ持論なんだけどさ、どうにもならない感情だと思ってるよ」
そう言って幸村くんは先程までの無表情から優しい微笑みに表情を変えた。
それはまるで私を安心させるかの様な微笑みだった。
「俺達はまだ中学生だし、好きだと思ったらその強い感情に引っ張られる人が多いと思う。でも【夢主名前】はそれを密かにしまってただろ?」
幸村くんの口から紡がれていく言葉に私の胸はじんわりと温かくなる。
彼が私を励ましてくれているのだと気付いたからだ。