第2章 【人気者の君に妬く】丸井ブン太
紙切れにかいてあった場所へとやってくると、既に人影が遠くからでもわかった。
待たせてしまっているなと思い小走りで近付いていくと段々と見えてくるシルエットは女の子のものではなく男の子だとわかる。
どう見てもうちの男子制服を着ていた。
「…あの?」
念のために自身を呼び出した人物が彼なのかを確認するために私が話しかけると相手は携帯をいじっていた手を止めて顔をあげた。
その人物は私を見るなり極上の笑みを浮かべる。
その微笑みは彼の元々の容姿を考えればとても綺麗なものだった。
人によってはその微笑みだけで恋に落ちてしまう女子生徒はいるかもしれない。
生憎私は特に興味はなかったけれど。
しかも残念な事にこの人数が多い立海大附属中学では3年間を通しても同じクラスにならない生徒なんてたくさんいた。
彼も私とってはそのうちの1人で全然見覚えのない生徒だ。
上履きの色を見れば同じ色をしているので同学年であることは間違いないようだけれど。
そんな見ず知らずの彼からの呼び出し内容は私に思い当たる事もなく何用なのだろうかと首を傾げるしかなかった。
「やぁ」
そう私に挨拶をしてから用件を話し始めてくれるかと思っていたのに始まったのは彼の自慢話ばかりで私は困惑するしかなかった。
何かその話に意図があるのかと思って最初は黙って聞いていた私も段々とその話が終わりの見えない事に時間ばかりが過ぎていく事に気が付いてどうしようかと悩み始める。
結局数十分聞いても状況が変わることもなく、私は段々と悩み始めていた。
どう考えても部活は始まっている。
こんな事なら【友人名前】ちゃんに幸村くんへの伝言を頼むだけでなくて他の人にも遅れる旨を連絡しておけばよかったと後悔した。
私の目の前でペラペラと話す彼は私が携帯を出すことも阻むのでどうしようもなくなっていた。
どうやってこの場を切り抜けるべきかと思考を巡らせてみたが私の頭では妙案は残念ながら浮かばなかった。
自分の機転の悪さに辟易する。
本当にどうしようかと思い私はとりあえず口でも挟もうと口を開きかけた瞬間に、この場に第三者の声が響いた。