第2章 【人気者の君に妬く】丸井ブン太
何時も通りの朝のはずだった。
何時も通りに朝練に出て、その後マネージャー業で後輩と一緒に色々と作業をして、終わったから部室から教室へと向かう。
それが何時も通りの私の朝だった。
でも今日は違った様だった。
下駄箱で上履きを取り出して履けば、いつもとは違う感触に驚いて靴を脱ぐ。
ぐしゃりとした感触がなんだったのかと上履きを覗き込めば、何やら紙切れが入っていた。
それを取り出してみれば、走り書きのように『放課後に校舎裏で待つ』という文言のみ。
正直悪戯かと思った。
でも、もしかしたら何か理由があってこんな風に私を呼び出した人がいるのかもしれないと思うと無視も出来ないなとも思う。
悪戯か否か……判断する為にその紙をジッと見つめる。
それに集中していたせいで私は自分の背後に人がいることに気付かなかった。
「立ち止まって何してるんだい?」
「――っ!?」
急に話しかけられて驚いて振り向けば不思議そうに私を見ている幸村くんがそこにはいた。
同じクラスだから下駄箱の位置は大雑把に言って同じ。
自分の上履きを取ろうとして来てみて立ち止まっている知り合いがいれば不思議に思っても仕方ない事だ。
でも今の私は完全に油断をしていて人が近くにいた気配を感じ取れていなかったので驚いてしまった。
その私を見て『驚かせて悪い』と苦笑しながら幸村くんが謝罪を述べるので私は首を左右に振る。
勝手に驚いてしまった私が悪いのだから幸村くんは何も悪くない。
何となく幸村くんに持っていた紙切れを見られたくなくて、私は慌てて制服のスカートのポッケにしまってから改めて上履きを履く。
その横で自分の下駄箱から上履きを取り出して幸村くんも丁度上履きを履き終わった所だったので2人で授業の話をしながら教室まで歩く。
教室に着く頃にはすっかり私は紙切れの事を忘れていたのだった。