第1章 【見えない角度で手を握り締め】財前光
「先輩たちが【夢主名前】の事、可愛い言うて気に入っとる感じがあるから……正直昼休み終わり間際に教室に一緒に帰ってきた時めちゃくちゃ気分悪かったわ」
「え!?」
思いもよらぬ話に私は間抜けな表情を晒してしまう。
ぎょっとした表情で財前くんを見れば私の顔がおもろかったのか少し笑っとった。
それよりも先輩たちがどうのというより、昼休みの財前くんのあの表情は私に怒っとるというよりは先輩たちにやきもちを焼いていたからあの表情やったということになる。
財前くんが私の事でやきもちを焼いていたという事実に驚きでいっぱいになる。
私ばっかり彼の事でやきもきしとるって思っとった。
お互いにそういった気持になっとったという事実が何だかくすぐったく思った。
「それと勘違いの元凶の昼休みの件。あの違うクラスのヤツ、白石部長狙いやで」
「え!?」
昼休みの光景を思い出す。
あの可愛らしい感じの女の子は財前くんじゃなくて白石先輩の事が…好き?
私が勝手に勘違いをしてしもうたという事や。
サッと血の気が引いていくのを感じる。
私の勝手な勘違いに巻き込んでしもた、【友人名前】ちゃんや先輩たちに対して申し訳ない気持ちが溢れてくる。
後で謝罪しにいかなければと強く思った。
私が落ち込んどるのを察したのか財前くんは「俺も勘違いさせるような事したし」と慰めてくれる。
先程置いてくれた手が私の頭を慰めるように撫でる。
「ちゃんと好きやから」
「うん。おおきに。私も財前くんの事、好き」
私がそう告げると財前くんが息を呑むのが分かった。
そして私の頭を撫でとった財前くん手が頭上から消える。
財前くんは少しだけ視線を私から外してから、また戻す。
私と再度目が合った時は彼の瞳が私を真剣な眼差しで捉えて離さなかった。
艶っぽい瞳が私を捉える。
真剣な表情と眼差しで私を見る財前くんがあまりにかっこようて今度は私が息を呑む番やった。
心臓の音がドキドキと煩い。
口から飛び出してしまうのでは無いかと思ってしまう。
私がそないな事を考えとると財前くんの顔が私に近付いて来ることに気付いた。