第1章 【見えない角度で手を握り締め】財前光
「気恥ずかしいのもあって言わへんかったけど…」
またモヤモヤと自分の中で考え込んでしまっとると、財前くんが気恥ずかしそうに話しだしたので私は彼を見た。
私から視線を外して、彼はゆっくりと話し出す。
「1年の時から可愛いし気配り出来るいいヤツだって思っとった。せやから告白された時も嬉しかったわ」
「え!?」
予想外の告白に驚いてしまう。
1年の時から財前くんも私事を気にかけてくれとったというから…。
1年の時なんてあまり話したことも無かったのに、私のことをそないな前から気にかけてくれていたと告白してくれて私の頬が熱くなるのが分かった。
私が小さな声で「おおきに」と告げると、私の頭にぽんっと手をおかれる。
しらん間に逸していた財前くんの瞳が私を見とった。
その瞳に見つめられて私は嬉しくて自然と笑みが漏れる。
「てか今日の昼休み…。謙也さんたちとずっと一緒におったん?」
「前に財前くんが屋上教えてくれたやろ?あそこ静かで好きで…【友人名前】ちゃんとお昼ご飯食べてたら先輩たちが来たの。あの場所使っちゃまずかった?」
昼休みの財前くんの視線を思い出して私はドキリとした。
あの場所は気軽に行ってはいけへん場所やったのだろうか?
以前に話してくれたし、たまに一緒にお昼を食べる時に2人で行くので私は大丈夫なのかと思っとったからだ。
「いや。たまたまか…」
財前くんは私の言葉で少し安堵した様に見えた。
怒ってはいないようで、あの屋上に行くこと自体は特に問題なかったようで私は安心した。
あの場所は人気もなく落ち着けるので私も好きな場所やったから。
ただ財前くんの言葉の続きに私は驚かされる事になる。