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テニ夢企画用

第1章 【見えない角度で手を握り締め】財前光


「…気ぃ遣わせて悪い」

私はウザいって言われるだろうと勝手に思っとったから財前くんの言葉に驚いて顔をあげる。
そこには私のことを申し訳なさそうに見とる財前くんと目があった。
それを見て私は自分を恥じた。
勝手に彼の事を決めつけて勝手に落ち込んで、アホやわ…ほんまに。

「私が勝手に思った事やから。むしろそれで気分悪くさせて堪忍な」

せやから私は誠心誠意彼に謝罪しようと思った。
勝手に彼の気持ちを決めつけるのなんてよくないなと実感した。
こないな風に自分が思い込まなければ今回の事は起こってへんのやから。

「…ちゃんと好きやで。あんま言わへんけど。俺そういう性格やないし」
「うん」

知っとる。
財前くんのそういった所も好きやから。
それをわかった上で告白しとったつもりなのに、それでも私は欲張りで少しでも願いが叶ってしまうと、次はこれ次はこれとどんどんと欲しがってしまうのやろう。
好きという言葉を聞きたいと思ってしもたのはきっと…私が彼の隣におる事に自信が持てんといたのもあるんだ。

クールで、かっこようて、物怖じせんと言いたい事を言えるところとか、意外と甘いものが好きなところとか。
そう言うた彼の色々なところが好きやった。
彼のことを好きだという子たちが多いのもわかる。だってとても素敵な人なのやから。
せやから私自身が釣り合っていない様に卑下してしまいたくなるのだ。

「あんま自分に自信ないのが元凶かもしれへん」
「なんやそれ」

ポツリと漏らす私の本音に財前くんが乗る。
正直な気持ちを吐露しとるのやからもう全て言ってしまおうと思った。

「その…私、別に特別取り柄もないやろ?財前くんに釣り合うとる気がせぇへんの。せやから勝手に不安になったというか…」

思い切って私が告げた言葉を財前くんは「アホか」と一蹴する。
その言葉に驚いてしまい私は財前くんの言葉の続きを待った。

「俺は気もないやつと一緒におる程のお人好しやないわ」
「うん」

その通りやった。
財前くんの性格からして好きでもない子を傍に置いておかへんのは分かっとった。
せやけど勝手に不安になってしもたのは私が彼のように輝いとる様な人間に思えへんかったからだ。
なにか1つでも自信が持てる事があればちごたのかなと思った。
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