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テニ夢企画用

第1章 【見えない角度で手を握り締め】財前光


座っている席が最後列で周りから見えにくいとは言え、この繋いだ手が見えないとも限らないから私は心の中で誰にもバレませんように。と思うた。
そう思うなら手を解いてしまえばええのに…そないな事は出来なかった。
少しでも財前くんと恋人らしい事がしたかった。
今は喧嘩みたくなってしまってうまく話せんでいるけれど、どうか今だけは私と財前くんの気持ちが同じならええなと願う。
こないにもドキドキして嬉しいけど気恥ずかしい気持ちが伝わればええのにと握りしめられた手を、私もギュッと握り返したのやった。

***

「……」
「……」

互いに無言やった。
図書準備室にて2人きり気まずい空気が漂っとる。
さっきまでの甘い時間は嘘のようやった。

私は財前くんをチラッと盗み見るが特に彼の表情からは何も読み取ることは出来ひん。
今までも特に読み取れた事はないのやから仕方ないけれど。

委員会の集まりの終わりが近付いた時に握りしめられた手は離れてしまいとても名残惜しく思ったがこのまま教室から出ることも出来へんので仕方ないと自身に言い聞かせた。
そのまま教室から出ようとした時に先生に話しかけられる。
次の当番の私達にメモした本を明日の当番の時に渡して欲しいとの事やった。
面倒な事を頼まれたなと思ったが私は今日は特に部活もないので頷き先生からメモを受け取る。
準備室の鍵を渡されると先生は用事があるらしくせわしなく走って教室から飛び出していった。

それを見届けてから私は図書準備室へ歩き出すと財前くんも付き添ってくれるので驚いた。
隣を歩いてくれた財前くんを見ればいつものクールな顔つきで隣を歩くので私は彼に何も言えずにそのまま一緒に準備室まで来とった。
そして今、私は先程先生に頼まれた本を探して準備室の奥へと進んでいく。
メモを見て同じタイトルの本を探そうとしたが、どうやら準備室はジャンル順やタイトル順といった感じに並んでおらんようでバラバラに本が棚に詰まっとった。
これは時間がかかりそうだなと思いため息をつく。
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