第1章 桜の想い出
「おや、綺麗に咲きましたね」
微笑む松陽と、うたた寝から起こされて憮然とした表情の銀時、走って上気した顔の小太郎と晋助。4人は咲いたばかりの桜をしばらく見つめた。
松陽は3人の頭を順に撫で、やわらかな声で言う。
「桜は、長く辛い冬に凍えた人に、春の喜びを与えます。人に愛され、人を集める花です。花が咲かない時期は、ともすれば忘れられがちですが、いかなる時もじっと、次の春に咲く力を蓄えている。あなた達も、そんな桜の花のような人になりなさい」
神妙な顔で頷く小太郎と晋助。憮然としたままだが、かすかに頷いた銀時。
松陽は、もう一度3人の頭を撫で、
「良い子ですね」
とつぶやいた。