第1章 桜の想い出
それから1ヶ月と少し経ったある日、穏やかな春の日差しの下、縁側でうたた寝をする銀時の頭上を、一匹の蝶々が横切った。
鼻でもつまんでやろうとしていた晋助と、それを止めようとしていた小太郎は思わず目で追い、そして縁側から降りて走って追いかけた。
蝶々は2人を誘うようにヒラヒラと飛び、庭の隅にぽつんと立つ、あの桜に止まった。
小さな木には、3つだけ、薄紅色の花が開いている。
「咲いておるな」
「…あぁ。おいヅラ、先生呼んで来よう」
「ヅラではない。桂だ。あと、銀時も起こしてやらねばな」
「ったく、しかたねぇな」
話ながら駆けて行く2人の頭上に、蝶々がヒラリと舞い上がった。