第2章 おはよう
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セイと出逢ってからひと月が過ぎた。移ろいつつある季節に長いようで短い一ヶ月だったと感じる。
あの日それぞれ用事を終えた後、駅前で待ち合わせて食事を共にした。といっても、セイはご飯を食べないから私が食べているところを見ているだけ。
それでもセイはほっぺが落ちるんじゃないかってほど満足そうな顔をしていた。
私達はいろんな話をした。
実家を出て今は一人暮らしだよ。働いてるよ。彼氏はいないよ。
そう伝えるとセイはどこか安堵した表情で、そっか、と目を細めた。
セイはというと、彼が店長と呼ぶ男性に拾われたらしい。実際には拾われたのはぼろぼろの携帯端末。
見せてもらったら、それは昔の私が使っていた物だった。
どこからか入手したがらくた同然のそれに、おかしなデータがあると気がついた店長さんが解析し、セイを見つけたという。
やがてデータの復元が行われ、その店長さんが昔勤めていた会社と協力して体が造られた。
セイが目覚めたのは初めての試運転の時。過去のことは何も覚えていなかったけれど、自分のことはちゃんと覚えていたらしい。
セイという名前。ユーザーのコンシェルジュとして作られ、マスターデータから生まれたこと。
誰かとずっと、一緒にいたこと。
それから、セイの大事な人達に会った。
古いながらも懐かしい品を集めたお店の店長さん。
そしてセイが働くアンドロイドの開発会社に勤めるお兄さん。たくさんの開発者の方達。近所の仲良しの野良猫も、大事な存在。
ちなみに今は店長さんの手伝いをしたり、会社でプログラミングや研究の手伝いをしているらしい。
セイは私の事を「俺の愛する人です」と照れながら紹介して回ったから、私は顔から火が出そうなほど恥ずかしかった。
みんなとても驚いていたけれど祝福してくれたり、ときに茶化したり。とても温かく接してくれた。