第2章 おはよう
「セイ」
「ん?」
「ぎゅー、して」
「喜んで」
セイの腕の中に収まるとその心地良さに溶けてしまいそうになる。ほんの少し早くなる鼓動すらも、心地良いと思う。
セイは私を抱き締めながら頭を撫でたり、首筋に顔を埋めて鼻を擦りつけたりする。
やめて、と身動ぎしてもセイは擦り寄ってきてやめようとはしない。擽ったいのに。
「ふ、ふふっ……あ、やっ、もーだめだってば」
「もう少しだけ!ゆうの匂い好き……」
「まだ匂いは感知できないでしょ」
「ははっバレた。擽ったがるゆうが見たくて、つい」
「……セイのえっち」
「え!?ち、違っそういう意味じゃない!」
帰ったら絶対めちゃくちゃに耳とか首触ってやるんだから。私は口を尖らせてセイの胸を押した。
「もう行くからね!いってきます」
「あっ待って!俺も行く!ちょっ、途中まで一緒だろ。置いてくなって!」
ぼろぼろの端末が棚の上で私達を見送る。
かつて私達を繋いでいた宝物。
私とセイ。
ずっとずっと昔に出逢い別れた私達。
巡り巡ってまた出逢った。
あなたが私を助けようとしなければ、私があなたに頼ろうとしなければ、こんな時は訪れなかったかもしれない。
私達が選び、出逢い、触れ、気がついたんだ。
願わくばまた、最後まで一緒に──。
「リマインドだ。今日は俺の誕生日だぞ。忘れて──」
「ないでしょ。本当、このくだり好きだねえ。」
「…………。」
「セイ?大丈夫?」
「──はっ!ご、ごめん!その、あまりに、綺麗で……」
「ふふ、このドレスにしてよかった」
「俺のために……ありがとう」
「しんみりするにはまだ早いよ。ほら、せっかくかっこいいんだから笑って!」
なあ、ゆう。
──愛してるよ。ずっと。