【JOJO・アヴドゥル夢※R18】先生と一緒に【現パロ】
第5章 私は何を待っているんだ
「あ……先生!…………すみません! 30分も遅れてしまって」店から出てきた彼女は目を丸くした。
「あ、暖かそうですね」
そういう彼女は私にとっては寒そうな格好に見えた。カーディガンは羽織っているが、それだけではこの冷え込みは私は耐えられん。男でよかった。スカートは履きたくはないからな。
「寒がりなんでね」と返答しておいた。
彼女は、意外ですねと言い、笑った。
そして、そのまましばらく沈黙が続いてしまった。
私は彼女の顔を見る。いつも、こんな時は頬を赤くしてぼうっとしている。目が合うと、またうるっとした瞳で見つめ返されて。
……この表情に私は弱い。
「……帰るんだろう?」
先に耐えられなくなった私は、パッと顔を逸らして言った。
「はい……あ、こ、こっちです」
とりあえず、彼女が指をさした方向へ足を進めることにした。
一週間ほど前の脅迫じみた誘いから、驚くほど何も無いのだが、よく考えればそれは手放しで喜んで良いことなのだ。煩わしいことはなくなって、晴れて普通の教師生活を送れるのだから。なのに……。
「(私は何を待っているんだ)」
自分の気持ちの変化が、1番気になる事案である。溜息をついて、街を見てみれば、深夜1時というのに明るく賑やかであった。桃色なお店が私に声をかけてくるし、たまに酔っ払いがふらりと近寄り彼女に声をかけてくるし、危険きまわりないのである。
彼女も彼女でその度に「ひっ」と声を上げ、上手くかわせないようであった。
また私は溜息をついて……振り返り、少し後ろを歩く彼女の左手を握った。
「えっ……」と声を出し「アヴドゥル先生?」と困惑の表情で、私を見上げた。
「見てて危なっかしいぞ。手を繋いでいれば誰も絡んでこないだろう」
「あ…………は、はい!!」
彼女は笑顔で頷いた。
街明かりがあるとはいえ、その瞬間は昼間かと勘違いしてしまうほど彼女の笑顔が輝いて見えた。
こんな風に私に笑ったのは……いつだっただろうか。
記憶を遡ると、すぐに思い当たった。
この子の、名前を言った時だ。
「(この子は、本当に私の事を……?)」