第1章 【アヴドゥル】気になってしょうがないんだ……!
伝えて、気まずくなって、一緒に居られなくなるのが怖かった。
願わくば、彼ものことが好きで……お互いに想っていたらと何度も考えたが、そんな都合の良いことは無い……そう彼女は考えていた。
だが、命をかけた戦いが続いている。
伝えなくては。後悔する日が来るかもしれない。考えただけでも悲しいが、本当にそうなのだ。
「お嬢さ〜ん!」
物思いにふけっていたは下卑た響きの声でハッと現実に戻る。振り返ると、3人の男性がニヤニヤしながら近寄ってきていた。1人が彼女の肩をぐいっと抱く。
「1人で寂しくな〜ィ? 俺らと楽しいことしようぜェ!」
「可愛いねー!」
「ホテルにバーあるし奢るよ〜!」
瞬時、は冷たい目になった。彼女も強力なスタンド使いだ。数人の男ぐらい簡単にぶちのめせる……。彼女の隣にはゆらりとスタンドの姿が現れるが、彼らには見えないだろう。
「(汚らしい男たちめ…………)」
ぶっ飛ばしてやろうとした時だった。
「私の”彼女”に何か用かな?」
「ッ!?」
が目を見開く。
男湯から上がったばかりであろうアヴドゥルが立っていた。彼は笑顔で、の肩を抱いている腕をグギギギギと掴み上げ「離せ」と重低音で威圧した。
「ちっ! 男がいやがったのか!!」
3人ともぶーぶー悪態をつきながら、その場から逃げるように走り去ってしまった。
それを確認した後、アヴドゥルがに向き直る。
「一般人にスタンドを使おうとしたな?」
ビクリと肩を震わせ、目線を逸らす。小さな声で、ごめんなさいと、呟いた。
「これからはするんじゃあないぞ。……だが、無事でよかった」
アヴドゥルは安心したように笑いかけ、彼女の頭を優しく撫でた。
「あの……っ! アヴドゥルさん……!」
「? どうした」
「さ、さっき……さっき………私の…………」
どんどん小声になっていくは、私の彼女って……と蚊の鳴くような声で尋ねた。
「あ…………」
アヴドゥルはの表情に釘付けになる。
彼女の頬は紅色に染まり、体を震わせていた。彼は、なぜ自分の前ではこうなんだと毎度思っていたことを思い出し、また恋占いのことも思い出していた。
「、ひょっとして……思い上がりでなければなんだが…………」