第1章 【アヴドゥル】気になってしょうがないんだ……!
アヴドゥルは思っていた。
なぜこんなに仲間に対して醜い感情を抱いてしまうのか。羨ましく思うのか。妬ましく思うのか。
なぜ、自分もと喋りたいと思うのか。笑顔を向けられたいと思うのか。
彼の性格から、その事は誰にも言えなかった。ただ、気になるとしか言えなかった。
次に、ふとポルナレフの言葉を思い出す。「恋占いはしたことないのか」という言葉を。
「(確かに、カイロで店をやっていた時は恋占いは多くあったが……。女性客がほとんどだった。皆、一様に顔を赤く染めて……まさに…………恋を……する……)」
そこでアヴドゥルはハッとなった。
も同じ顔をしていることに気付いた。
「は恋をしているのか??」
それを聞いたポルナレフがはーっとため息をついた。
「ようやく気付いた?」
「…………誰にだ!」
「お前、本気で言ってる?」
「本気だが」
アヴドゥルは平静を装って言ったが、内心凄まじくなっていた。が誰かに恋をしていると思うと、いてもたってもいられない感情になっていた。
怒りとかではなく、胸がざわつくような、体の中で嵐が吹き荒れるような。
暑い、熱い、暑い、熱い。
「な、なぁ…………アヴドゥルは、なんでマジシャンズレッド出してんだァ??」
「さあな」
異様な視線を送るポルナレフを、軽くあしらった承太郎は興味なさげにタバコを取り出した…………。
「丁度いい。……火、貰うぜ」
日が地平線に沈み、空には漆黒の闇が広がる。月の周囲は青々と輝いており、その明かりは綺麗な月明かりとなってホテルの廊下を照らしていた。
大浴場での入浴を終えたは、廊下に出て、その景色を溜息をつきながら眺めた。
「アヴドゥルさんに気持ちを伝えなきゃダメかなぁ……」
すぐに、ぶんぶんとかぶりを振って「無理!」と心の中で叫ぶ。
「(アヴドゥルさんのことは好き……! 本当に大好き! だけどこれを伝えて、そのあとは?)」