第1章 【アヴドゥル】気になってしょうがないんだ……!
は目線を逸らせないまま、声を絞りだす。
「私、アヴドゥル……さん……の…………」
「私……の?」
「ッ!!!」
苦しげな息を漏らし、は顔を伏せてしまった。小さな声で「言えません……」
「無理に言うことは無いんだが……嫌われているのではないんだな?」
「!」
またがガバッと顔を上げた。衝撃でガタンと机が音を出す程だった。
「嫌いなんてそんなことありません! むしろ…………」
「!?」
アヴドゥルはの剣幕にかなり驚いた。こんな風に勢いよく何か言われたことも初めてだ。
アヴドゥルの様子を見て、また赤い顔をガバッと伏せてしまった。
「す、すすすみません……! 今は……言えません……」
心の準備をください、と呟くと残りの紅茶をぐいっと飲み干して、そのまま外へ飛び出してしまった。
「あっちゃぁ……………………」
一部始終を見ていたジョセフたちは、修羅場を見るような目で見ていたのだった……。
ホテルの一室にを除いたジョースター一行が集まった。連日続くスタンド使いとの疲れを癒すための宿泊というのに……。ジョセフたちはアヴドゥルを囲んで見下ろしていた。
「ど阿呆! 迫りすぎじゃ〜!」
「アヴドゥルさん、がっつき過ぎです」
ジョセフと花京院が呆れたように肩を竦める。
「しかし……本当に分からないんだ」
頭を抱えるアヴドゥル。
その場にいた全員がのように無言になり、はーっとため息をついた。
鈍感だ。鈍感すぎる。
「アヴドゥルはどうしてそんなにが気になる?」
尋ねたのは承太郎だった。
その問でアヴドゥルは顎に手を当てて、うーんと声を出す。
「なぜと言われてもなぁ……」
とにかく”気になる”という文言が彼の頭には浮かんでいた。
の姿が彼の頭に浮かぶ。
その姿は、ポルナレフと笑って喋る姿だったり、ジョセフに頭を撫でられて笑ってる姿、花京院とハイタッチする姿、承太郎に笑顔で挨拶をする姿……。
それを見る度に……。
「気になってしょうがないんだ……!」