第3章 【アヴドゥル】もしかして私たち入れ替わってる!?
多少、アヴドゥルは衣服や髪が乱れた程度。対して私達は完膚なきまでに打ちのめされた。
エレベーターの無いビルの屋上まで逃げてやったんだけど、あいつ全力で追いかけてきたよな。
イギーと一緒に檻にぶち込まれ、アヴドゥルに「ボク、名前は?」と言われた時はカチンときたね。猛犬扱いする上に性別まで勘違いしてくるとは。
この口調で、こんな男みたいな髪型してるから仕方が無いのかもしれないけど。
その時はまだ10代だったかな。
「すぴーどわごんざいだん」で働きながら、イギーと生活していた。そして、成人した頃、ジョースターさんからDIOの話を聞いた。あまりにも突拍子もない話だったけれど、彼の話だからよく聞くことが出来た。
ジョースターさんはアヴドゥルと違って、話はわかる人だし、自然と「さん」をつけて呼んでいた。親のいないオレの親代わりな感じで、温かくて優しい人だ。
日本に来た時はジョースターさんの娘さん「せーこねーちゃん」がすごく優しくて、美味しい料理ご馳走してくれて嬉しかった。本も読んでくれたんだぜ。お風呂にも一緒に入った。
でも、何で好きになったのはアヴドゥルの方なんだろうな。
アヴドゥルはオレの生活指導を担当。少しカイロで一緒にいた時期があった。オレの生活のやり方や喋り方、行動を逐一注意してくるうるせー奴! と言うのがアヴドゥルの印象だ。年齢だって聞けば、まだ20代後半じゃあないか! オレとそんなに離れていないのに、アイツの精神年齢はオヤジそのものだ。ジョースターさんは精神年齢はもっと上になっていい感じはあるけれど。
それでも、一緒に何かやってあいつが笑うと嬉しいと感じたり、楽しいと感じたり。
そして「女と思わん」と言われたら悲しく感じたり。
きっかけは無かった。あったのかもしれないけど、忘れてしまった。
それをジョースターさんに相談したら「おめでとう」と言われた。
それは「恋」と呼ぶらしく、その日から毎晩ジョースターさんに「恋」について学んだ。
初恋……オレはアヴドゥルに「恋」してるって意識するようになったら、あいつの前でたまに上手く喋れなかったり、挙動がおかしくなったりした。
口調だって改めた方がいいのは分かっているんだけど、いきなりは変えられないし、それに照れ隠しに男口調は出てしまう。
女みたいにって、髪も伸ばした。
可愛い下着も、靴下も買ってみた。