第3章 【アヴドゥル】もしかして私たち入れ替わってる!?
「好きな人……って…………?」
「アヴドゥル以外誰がおるんだ」
次は、脳天から雷に貫かれたかのような衝撃が全身に走った。
今まで、にかけた辛辣な言葉の数々を思い出す。
は、私のことが好きなのか。彼女はいつも、あの態度だ。全く気付かなかった。
想い人から「女と思わん」と言われたら、女性はどんな気持ちになるだろうか。彼女はいつも不機嫌そうに「あっそーーかよ」と言うだけだ。……と思っていたのだが、影で泣いていたというのか。
私は、何度を心を傷つけていたというのか。
椅子からゆっくり立ち上がり、私はジョースターさんの部屋を出た。後ろで彼が何か言っていたが、全く耳には届かなかった。
○
いつも口調を注意すると、は、うがー! と反抗してくる。
「仕方ねぇじゃん! 親に捨てられてガキん頃から女1人でゴミだめで生きてきたんだ! この口調もオレの生き方もやり方も全部食うためには必要だったの!!」
それが彼女の言い分だった。
記憶を掘り起こせば、2年少し前から、たまに口調が変だったり妙に大人しかったり、挙動がおかしい時があった。それは、私がジョースターさんとの仲を疑いだした時期と被る。
こういう事だったのか。
ホテルの部屋の鏡に映るは、中に私という男がいるのに、ちゃんと一人の女だった。
電話がなっていたが、出る気にもなれず、私は一晩中眠れず、そのまま朝は来てしまった。
朝、ホテル玄関前には既に私の体のが立っていた。昨晩のこともあり、すぐには声がかけられなかった。
「アヴドゥル?」
立ち尽くしている私に、が気付いて声をかけた。
彼女はあくびをして「おせーぞ」と一言言った。彼女は、ホテルのスティックパンだろうか、それをもりもり食べている。1本私に放り投げた。
「やるよ。ねんりょー入れなきゃやられるじゃん」
「……ありがとう」
「お金はアヴドゥルのだけどなー!」
ニヤッと笑った。その彼女をよく見ると、髪型がオールバックにして後ろでひとつに結んでいるだけだった。
指摘すると、はため息をつく。