第6章 夏の終わり
「あの…?」
そういえば、この家の前に小さな川がある。
もしかしてその川に落ちたのかな…?
農業用の用水だから、そんなに水量なかったはずだけど…
その人の立っている花壇は、もう花が終わった植物が枯れて散らばってる。
なんの花が咲いていたかは、わからない。
かあちゃんが花壇きれいにしようか?って言ってたけど、翔にいは笑って遠慮した。
一人だとなかなか手が回らないけど、ゆっくりのんびりやってれば、そのうちまた花が咲くからって…
その人に近寄ろうと足を踏み出した。
「和也っ…」
後ろから、翔にいの鋭い声が聞こえた。
「え…?」
「その花壇に近寄るな」
「や、でも人が…」
振り返ると、花壇には誰も居なかった。
「えっ…」
「なに一人でブツブツ言ってるんだ…」
「人が居たんだよ…」
翔にいは俺の肩を掴んだ。
「痛っ…」
痛いくらいの力が入ってる。
驚いて顔を見上げる。
「…誰も居ないじゃないか…」
「居たんだってば…!」
「見間違いじゃないのか?」
「え…?」
「…買い出し、行くぞ」
その目には、なんの表情もなかった