第22章 diable aux cheveux d'argent
桜の季節が来た。
海辺に建つ、真新しい建物を見上げ渡海は天城の顔を思い出していた。
どうしても、自分のものにならなかった兄──
その兄のように、たおやかでそしてしなやかな桜の若木に渡海は触れた。
「一緒に…」
呟いた唇が微かに震えた。
「この桜が咲くのを一緒に……」
心の底からの懇願に聞こえるその声も震えている。
黒の髪が潮風にまた吹かれた。
胸に微かな痛みが走った。
男は眉をひそめると、ジャケットの胸元を握りしめた。
「行って、くる」
その目は、はるか未来──
満開になった桜を見上げている。
【diable aux cheveux d'argent END】