第6章 夏の終わり
「ただいまー」
次の日の夜、翔にいが仕事を終えて帰ってきた。
縁側の座敷でごろごろしてゲームをしていた俺は、エンジンの音が聞こえると飛び上がって起きた。
なんだかわかんないけど、寝癖を直しながら玄関まで出迎えに行った。
「おかえり」
「おう。飯、どうする?」
「冷蔵庫、なんもないよ?」
昼は自分でなんとかしたけど、冷蔵庫には肉が入ってない。
貰い物のきゅうりやらなすやらはそのへんに転がってるけど…
「あ、やべ…買い物行ってこなきゃいけないか…」
広い廊下を歩いて、翔にいは台所に入っていった。
「…あれ…」
開いたままの玄関から外を見ると、外の花壇の中に誰か立っている。
「お客さんかな…」
翔にいのビーサンをつっかけて外に出た。
「あの…?」
声を掛けてみると、その人はゆらりと揺れた。
あたりは薄暗いオレンジ色に包まれてる。
もうすぐ、漆黒の夜がやってくる。
そんな時間だった。
白の開襟シャツを着て、黒のズボンを履いてる。
学生…なのかな?
髪が濡れて、雫が滴り落ちている。
「どうかしたんですか…?」
意思の強そうな眉に、大きな目。
エキゾチックな顔立ちは、どこかでみたことがあった。
その白い頬は、血の気を失って真っ青に見えた。