第6章 夏の終わり
「翔にい…」
声を掛けるけど、返事はない。
「翔にい…?」
軽く襖を叩いてみたけど返事はない。
もしかして明かりをつけたまま寝てしまったのか。
そっと襖を開けると、涼しい風と嗅いだことのない甘い香りが隙間から出てきて…
「なんの匂い…?」
リビングのエアコンをつけてもいいか聞こうと思って、襖をもう少し開けて、部屋に足を踏み入れた。
部屋の中は涼しくて、快適だった。
畳の上に、絨毯が敷いてあって洋風にしてある。
壁も、他の部屋は砂壁が多いが、少しリフォームしてあるリビングと同じ壁紙に張り替えてある。
左手にデスクトップパソコンが置いてあるデスクがあって、社長みたいな椅子が置いてある。
右手には本棚があって、雑多に本やCDが詰め込んである。
その向こうが押入れになってる。
いかにも、子供部屋から進化しましたみたいな部屋だった。
奥に布団を敷いて、翔にいが横になってた。
枕元には読書灯がついてて、この明かりが襖越しに見えたみたい。
手に本を持ったまま、寝てしまっている。
「翔にい…翔にい…」
寝てしまってるとこ悪いけど、リビングのエアコンを使う許可を貰っておこうと思った。
いくらなんでも翔にいの布団に潜り込むことはできないし…
声をかけても起きないから、肩を揺すってみた。
ぴくりと瞼が動いて、翔にいの目が開いた。