第6章 夏の終わり
縁側から少し入った畳の座敷で、ごろんと翔にいは大の字になった。
「お茶、まだ飲みたいなら冷蔵庫に入ってるから」
「おん。ありがと」
俺も日の当たる縁側から、ビーサンを脱いで座敷に上がった。
日向よりもちょっとだけ涼しい。
でも風もないから、あまり変わらないけど…
翔にいの近くでゴロンと大の字になると、天井を見上げた。
ミンミンと蝉がうるさい。
ジージー言ってるやつは、なんつー蝉なんだろうか。
東京の下町で育った俺には、よくわからなかった。
「……おまえ、大学うまくいってないの?」
「…えー?んなことないけど…」
「じゃあ、なんで東京帰らないんだよ。今まで来てもすぐ帰っていってたじゃん。今回に限って、残るなんてさ…」
「別に…たまには田舎で夏を過ごすのもいいかなと思って…」
「なに疲れたサラリーマンみたいなこと言ってんだよ…若いモンがこんな田舎に居て、楽しいわけ無いだろ…ゲームばっかしてるし」
「…なぁんだっていいだろ…俺がここに居たいって思ったんだもん」
そういうと、ごろっと翔にいがこっちに身体を向けた。
「…なんかあったんだろ?」
「ないって…」
ちらりと翔にいの顔を見た。
色白で…サラサラの前髪が、畳についてる。
アーモンドみたいな形のくりっとした目が、まっすぐに俺のこと見てた。