第6章 夏の終わり
ここいらは、田舎で…
車がないとどこにも行けないくらい、公共交通機関もない。
一番近いバス停が徒歩20分の距離にある。
駅なんていったら、車で40分くらい走らないとない。
翔にいが車で仕事行っちゃったら、俺には移動手段がなくなってしまう。
「ネットができれば、どこに居たって一緒だもん」
「へえ…今どきなんだねえ…」
トントンと腰を叩くと、床に積み上がっていた座布団を押入れに仕舞った。
「よし…終わった…」
「おつかれ。翔にい」
「生意気言うな」
ここはかあちゃんの実家で。
翔にいは、本家の跡取りで、俺の従兄弟。
跡取りと言っても、もう翔にいの両親は亡い。
だからもう当主ってことになる。
といっても、嫁さんを貰ってるわけでもないし、兄弟もいないから、もう本家としての役割は、ここのすぐ近所に住むかあちゃんの弟の家に移りつつある。
でも法事だけは、やっぱり本家でないとだめだったから、今日の朝まで、翔にいは働きっぱなしだった。
今朝までうちの父ちゃんと母ちゃんと姉ちゃん一家(姉+旦那+ガキ2)が泊まってたもんだから、大わらわってやつで。
「翔にいも少し休みなよ。疲れたでしょ?」
「おう」
昨日で翔にいのご両親の最後の法事だった。
次からは、翔にい一人で弔うということだ。
三十代半ばなのに、本家の仏壇と墓というえらいもんを背負い込んでるなって。
ちょっと気の毒に思ってる。