第6章 夏の終わり
「あっつい…」
庭先に放り出したホースから、まだチョロチョロと水が出てる。
「今年もあっついなあ…和也…」
縁側で伸びてる俺に、翔にいがお茶を持ってきてくれた。
「水遣りありがとな。ちょっと休めよ」
「おん…ありがと」
麦茶を飲みながら、庭を眺め渡した。
そんなにでっかい庭じゃないけど、やっぱり田舎の家だから結構な広さがある。
雨が降らないもんだから、庭木なんかにも全部水を遣らなきゃいけなくて…
田舎の家だから、こんもり庭木やらなにやらがあって…
水やりするだけでも死にそうだった。
お盆を越えて、セミの鳴き声がうるさい。
お盆前まではちらほらといった感じだったらしいが、こんな暑いのに一斉に羽化したのか、ミンミンやらツクツクやらうるさくてしょうがない。
首に掛けたタオルで汗を拭いてるけど、間に合わない。
「俺も水浴びちゃおうかな…」
「お。行水しちゃう?」
翔にいが後ろの座敷の片付けをしながら、笑う。
「タライでも用意してやろうか?」
「やだよ…」
なんでこんな庭先で裸にならなきゃならないんだ。
小学生かよ…
「大学生にもなって、水遊びなんかできねーか」
カラカラと笑いながら、座布団を片付けてる。
「おまえ、いつ帰るんだよ」
「えー…決めてない…」
「ふうん…まあ、別に部屋余ってるし。居たいだけいてもいいけどさ…明日から俺も仕事始まるし、ひとりになるぞ?いいの?」