第22章 diable aux cheveux d'argent
「来た…でしょ?」
おまえは来た。
だから、いいじゃないか。
天城の心に仄かな温かさが広がる。
酸素マスク越しのくぐもった声を聞くと、渡海は天城のマスクを剥ぎ取った。
あまりの行為に天城は信じられない思いで、自分の弟を見上げた。
「…アレ、どういうこと?」
「……?」
「アンタの心臓の血管」
それだけで、意味がわかった。
あの家で見た、事実。
それが実際に天城の心臓を手術した、この男にも伝わってしまったようだった。
「それ、は…」
どう答えたらいいんだろう。
どう答えたら苦しませずに済むんだろう。
答えの出ない問いがぐるぐると天城の頭を駆け巡る。
渡海は先ほどと変わらない目で天城を見下ろしている。
自分と寸分たがわぬ顔が、自分を見下ろしている不思議に今更ながら天城は笑いが込み上げてくるのを禁じ得なかった。
「なに笑ってんだよ。笑い事じゃないだろ」
笑いを含んだような、静かな穏やかな声。
しかしそこにはどうしようもない怒りが籠もっているように、天城は感じた。
「う……」
酸素マスクから得られていた酸素が減ったからか、それともこの冷たい空気に心臓が耐えられなくなったか。
急に息苦しさを感じて、天城は目を閉じた。
それと同時に心電図のモニターがけたたましいアラートを発した。
「ちっ…」