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ヘブンズシュガーⅢ【気象系BL小説】

第22章 diable aux cheveux d'argent


渡海の冷たい手が、天城の額に触れた。
思わず天城は息を飲み込んだ。

その手があんまり冷たくて、声が出そうになった。

「…世良」
「はい」
「休んでこい」
「いや、でも…」
「いいから。ここは俺が見ておくから」
「渡海先生…」
「きっちり1時間待ってやる。それを過ぎたら出国できなくなるからな」
「え…?」
「俺は俺の患者ほったらかして来てんだ。今日帰るから」

渡海は天城の眠っている顔を見ながら、指を天城の頬に滑らせた。
びくりと天城の皮膚が震えた。

「ホラ、行けよ」
「あっ…はいっ…じゃあ、仮眠室で仮眠してきます!」

バタバタと世良の走る音が聞こえる。

「…病院で走ってんじゃねえよ…」

ボソリと渡海の呟く声が聞こえた。

「で?まだ寝たふり続けるわけ?…兄さん」

この渡海の声が自分に向けられたものだというのは、わかってる。
でも素直に目を開けることができなかった。

胸が痛い。
この痛みは、なんの痛みなのか。

目を開けたら死んでしまうんじゃないか。

「いい加減にしろよ」

天城は観念して目を開けた。

「ん…」

渡海の顔が天城の顔に近づいた。

「mensonge…」

天城は驚いた。
これほど似ているものなのか。
ホクロの位置まで全く同じ。
まるで鏡を見ているようだった。

どれくらいの時間が経っただろう。
渡海は丁寧に術後の天城の身体の状態を確認していった。

一通り終わると、渡海はひとつ息を吐き出した。

それを聞いた天城が目の中を覗き込むと、渡海の冷たい手が天城の頬を包んだ。
親指で下瞼を下げると、また目をじっと覗き込んだ。

「…よし。経過はいい」

そう言うと、そっと渡海の手は離れていった。

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