第21章 1997年6月17日
「は~…今日は踊れなかったなあ…」
相葉ちゃんが真っ暗な空を見上げながら、ため息を付いている。
雨は俺達が稽古場の最寄り駅に着いた頃に止んで、もう降っていないようだった。
「少しでも踊ろうとすると、サンチェ先生が怒鳴ってきたもんね」
「うるさかったよな!いいじゃん、ちょっとくらい!」
素直に感情を表す相葉ちゃんの横で、ずっと仏頂面をして地面を眺めているニノはなにも喋らない。
「まあでもしょうがないよね。V6の今回の曲、結構力入ってるもんね」
「もう遅刻しないようにしようね。見捨てられちゃう」
「あはは!そんなことないでしょ!」
相葉ちゃんは笑うけど、素行の悪い人は早々に見捨てられてるのをこの1年嫌と言うほど見てきた。
相葉ちゃんは、もしかして気づいてないのかなあ?
「ねえ!」
ニノが突然立ち止まって、大きめの声で俺達を呼んだ。
「え?なに?」
「どうしたんだよ、ニノ…」
俯いていたニノは顔を上げた。
「今から公園で練習しない?」
「ええっ!?こんな時間だよ!?」
「もうこんな時間だからいつ帰ったって一緒じゃん」
「ニノ……」
戸惑っていたら、相葉ちゃんが腕時計を見た。
「あ~…確かに。でもさ、終電まではまだちょっとあるから、行こうか!」