第21章 1997年6月17日
パチパチパチと大きな音を立てて、サンチェ先生は二人に向かって拍手をした。
一斉に稽古場に居るみんなが入口に突っ立ってる二人に注目した。
「おはようございます。大先生たち」
「え…あの…」
「す、すいません!遅れました!」
相葉ちゃんはまだ凍りついてて、ニノがなんとか頭を下げて謝った。
「ああ…どうしよう…」
今日は遅刻したらだめな日だっていうのに、俺ってばサンチェ先生が来るまですっかり忘れていた。
ちゃんと相葉ちゃんとニノを連れてくればよかった。
「ゲームしてて遅れたって?さすがだなあ。大先生たちは違う」
珍しく怒鳴りつけないで、嫌味を言う先生は三白眼を細めて二人を睨みつけている。
「スイマセンでした!」
「す、スイマセンでした!」
きっちり90度に頭を下げて二人は謝っているけど、先生はそれを無視した。
「はい、じゃあこれから隊列の説明するから。曲はまたテープ渡すから覚えてこいよー」
二人は入口に立ち尽くしたまま呆然としている。
俺は恐る恐る手を上げた。
「あのー…」
「なんだ風間」
一世一代の勇気を振り絞った。
「せっかくちゃんと謝っているのに無視するのは良くないと思います」
多分、このとき声が震えていたと思うんだけど、恥ずかしいから思い出したくない。