第21章 1997年6月17日
稽古場についてストレッチをしてたら、振り付けの先生が入ってきたから一斉に整列した。
「あっ…」
やば…今日は先輩の新曲の振り落としだから、遅刻したら駄目な日だった!!
「よし、揃ってるな。今日はV6の曲の振り付けをするからなー」
ラジカセにMDを差し込んで曲の準備をしてるのに、ニノと相葉ちゃんはまだこない。
どうしよう。
今日は、サンチェ先生なのに。
「まだ曲は仮だけど、ほぼこれで決定ってことだ。みんなよく聴くように」
ラジカセから軽やかな曲が聞こえてくる。
サビは陽気に『輪になって踊ろう』って言ってる。
どうしようと考えていたら、いつのまにかサンチェ先生が体育座りをしている俺の隣に立っている。
「おい、おまえ名前なんていうんだっけ」
「あ、風間です」
もう何回もこの会話したけど、この人いつ覚えてくれるんだろう。
「おまえがいつも一緒に居るのはどこだ?」
ニノのことだ。
「あ…えと」
「あと、なんか目立つひょろひょろしたあいつ。あいつもどこにいるんだ?」
たぶんこれは相葉ちゃんのこと。
「えっと…その、よく、知らない、です」
「なんだ?喧嘩でもしたのか?」
ぎょろりと大きな目の三白眼を俺に向けた。
「あ、え」
「ったく、思春期男子はめんどくせぇ…」
なにかバインダーに挟んだ紙を見ながら、ブツブツと言っている。
そのとき、バタバタと大きな足音が聞こえた。
「もおお!遅れたじゃないのよ!あなたのせいだからねっ」
「俺じゃないだろ!?おまえが夢中になってゲームするからっ」
あちゃー…
三白眼がギロリと稽古場の入口を見た。
その瞬間入ってきた二人は、サンチェ先生と目が合って凍りついた。