第21章 1997年6月17日
でも…相葉ちゃんのすごいのはここからだ。
「だから飽きたって言ってるでしょ!?」
手を振り払おうとするニノの手をがっしり両手で握りしめて、ゲーム機を無理やり押し付けている。
「わかんないだろ!?新しいゲーム機ならまた違う落ち方するかもしれないだろ!」
「なにそれ!?そんなわけないじゃん!同じ物なんだからっ」
「わっかんねーだろお!?やってみないと!」
「うーーー!じゃあ、今やる!」
「おお、やってみろや!」
もう。
コントですかこれ。
「ほら!一緒でしょ!?」
「わーニノすげえ…上手い」
「そこじゃないのよ!そこじゃ!ほら、あなたが前にくれたゲーム機と一緒でしょうよ!?」
「わっわっニノ、ほんとすげえな!ゲーマーじゃん!」
「げ、ゲーマーに失礼よっ」
顔を真赤にしながら相葉ちゃんと額を突き合わせてる情景は、なんだかおしりがむずむずするようなもので。
神様。
俺はなにを見させられてるんでしょう。
「あのー…相葉ちゃん、ありがとうね。稽古遅れるから、俺行くね」
そう声を掛けたけど、楽しそうなふたりには聞こえてるのか聞こえてないのか。
ギャーギャーと騒ぐふたりを置いて、俺は稽古場に向かった。
やっぱ…
しがないぼっちの運命は、ぼっちなのさ。