第20章 こちらアラシノ引越センターの…②
二人が出ていくと、事務所はしんとした。
外で作業員たちがガヤガヤしているが、それもやがていなくなるだろう。
ふふっと今度は潤が笑った。
「何笑ってんの。やらしー」
そう言ってやったら、苦笑いした。
「なんか、あの頃の俺達みたいだな」
「あんなちっちゃかったか?」
「身長じゃねえよ!」
「わかってるよ!」
懐かしい、あの頃の俺達。
まさかここで…この場所で、俺の運命が決まるなんて思ってもみなかった。
「正確に言えば、あの頃の俺達より若いよな?」
「そうだな。俺達もう30歳過ぎてたから…」
現金を金庫にしまおうと立ち上がると、潤も書類を片付け終わったとこだった。
「じゃ、今日は俺が見回りしてくるよ」
「ああ。頼むね、潤」
現金を金庫にしまって戻ると、潤と俺の机に置いてあるマグカップを洗うのに給湯室へ行った。
食器を洗っていたら、潤が戻ってきたようだった。
「翔、ロッカー室も閉めてきたよ」
「ありがと」
「じゃあ鍵束も金庫にしまうから」
「ああ」
茶碗を洗い終わったら軽くシンクを洗って。
共用の台拭きんを洗って干すと、もうとっぷり時間は暮れていた。
「あれ?どした?」
給湯室の入口に寄りかかって潤がこちらをみていた。