第20章 こちらアラシノ引越センターの…②
そんな事をしていたら、潤の社用ケイタイが鳴った。
「はい、徳川。ああ…終わった?お疲れ」
俺に指で丸を作ってみせると、潤はにっこりと笑った。
笑うと年を感じさせない。
あの頃のままの笑顔。
「じゃあ安全第一で帰ってきて。待ってるから」
そう言う横顔は、すっかり支社長の顔に戻っていた。
通話を切ると、潤は自席に戻っていった。
椅子に座ると大きくあくびをした。
「あーあ…にしても今日はひでぇのに当たったなあ…」
そのひでぇ現場というのは、午後フリー便の1.5トン積み切りという約束だったのに、もう一台ほど必要になりそうな未梱包の汚屋敷で。
繁忙期じゃなかったことと、2トントラックもう一台分の料金とゴミの廃棄料を追加で支払うということで話がついて(結局普通の引っ越しより金が掛かっているから何がしたかったのかよくわからん)、特別に今まで作業していた。
「まあでも応援も行ってるし、思ったより長引かなかったな」
「繁忙期じゃなくて助かったよ」
「ああ。大野班は逆に今日、恵まれてるねえ。班長、副班長、マイスター、準マイスター全員揃って応援行ってるんだから」
くくくと潤は笑うと、意地悪そうな顔で俺を見た。
「あんたも鬼よねえ…」
「大野リーダーも勉強なったろ」
「まあな。久しぶりに社員の作業見たら、また違うだろうしね」