第1章 仄暗い奈落の底から -sequel -
「え…?」
突然の問いに、潤は戸惑いながら智の方を見た。
「聞いてるだろ…?俺たち、翔くんに無視されてる…避けられてる」
「そ、そんなことないだろ…智…」
誤魔化すように、潤はビールを注文した。
それからちらっと俺の方を見た。
「ほら、忙しいんだって…なんか、主任かなんかになったらしくてさ。責任のある仕事任されてんだよ」
「え…そうなんだ…」
それは知らなかった。
出世、してたんだ。
さすが翔ちゃんだな…
俺達の誰よりも先を歩いて。
誰よりも努力家で。
そして誰よりも…
優しい
「潤…言ってくれよ。翔くん、なんか俺たちのこと…」
「なんもねえって言ってんだろっ」
ちょっと、潤はムキになった。
相変わらず、嘘がつけないんだな…
昔から変わらない。
潤は嘘をつくと、言葉が強くなるんだ。
まるでその嘘を自分自身に言い聞かせるように…
「潤…」
智の声が低くなった。
「おまえ、なんか知ってるんだな?」
びくりと潤は肩を震わせた。
めったに怒らない智が、怒ったからだ。
「翔くんは、おまえや雅紀には会ってるんだろ?」
「お…俺達だって、滅多に会えるわけじゃ…」
「俺たちは一年前から会えてない」